地域に根付き、愛されるパン屋『ベーカリーショップ ロンドン』(岐阜市)
1992年にオープンし、今年で32年目を迎える『ベーカリーショップ ロンドン』。かつて、柳ケ瀬商店街には多くのパン屋が並んでいましたが、現在営業している路面店はこちらの店舗のみ。時代が移り変わっていく中、なぜ多くの人に支持され続けてきたのでしょうか。
日ノ出町通りにいつもある焼きたての香り
『ベーカリーショップ ロンドン』の場所は、昭和の名作シネマを上映する「ロイヤル劇場」が入ったロイヤルビルの斜向かい。隣にあるお好み焼き・焼きそばの店「マサムラ」とともに、アーケード街を東西にまたぐ日ノ出町通りの名物店です。
入口前にはおすすめの品のスタンドが。近江牛や淡路島産玉ねぎを使った2種類のカレーパン、そして定番のあんこバター。どれもおいしそうです。客が店内に入るたびに開くドアから焼きたてパンのいい香りが漂います。
店内に入ると棚に50種類近くものパンやサンドイッチがずらり。いつもこの光景が見られるのは、毎日早朝からスタッフが丹精を込めてパンを焼いているため。また、できる限り焼きたてを楽しんでもらえるよう、焼き上がり時間やラインアップを調整しながら随時店頭に並べているそう。
「店を続けるにはパン作りを楽しむ気持ちと地道な企業努力の両輪が必要」と店主の中出(なかで)清文さん。確かな目で素材を吟味し、毎月新作を生み出す情熱的な職人である一方、1時間あたりの販売個数などのデータを冷静に分析する一面も。30余年に渡ってパンと数字に向き合ってきた中出さんの言葉には重みと説得力があります。
専門店の品質と量販店の価格を両立
スタッフの方に人気商品を尋ねると、真っ先に名前が挙がったのは「まぼろしのクリームパン」。ふわふわの生地の中に詰まった、独自配合のクリームが絶品です。名前の由来は、幻のように口の中でクリームが溶けてしまうからだそう。ほかにも「ショコラです。」や「モーモーパン」など、ユニークなネーミングの商品がたくさん。スタッフが意見を出し合って決めているそうで、その光景を思い浮かべるとなんだかほっこりします。
こちらも人気という「パイコルネ」は、発酵バターを練り込んだサクサクのパイ生地が絶品!カスタードやピスタチオホイップ、期間限定のとちおとめ苺クリームなど種類が豊富なのも魅力です。移動販売車で出店した際に、1日で数千個売れることがあるというのも納得。これ1つでちょっと贅沢なティータイムが演出できますし、手土産にもピッタリですね。
写真の食パンは「とにかく柔らかい食パンが食べたい」という客の声から生まれたものだそうです。「以前フランスパンを使ったおしゃれなサンドイッチを作ったんです。完成度に満足していたのですが、いざ販売してみると「生地が硬い」とお客様からは不評で。そういった経験もあり、自分たちが売りたいものを一方的に推すのではなく、お客様の声を反映させたパン作りを心がけています」と中出さんが開発の裏話を教えてくれました。
取材後に、この店の記事を扱った20年前の「aun」を見てみると、今回聞いた話がほぼそのまま載っていたことにとても驚かされました。想いを語ることはできても、なかなかそれを貫ける人は多くはありません。私もまちの先輩を見習ってかっこいい大人を目指したいものです。
『ベーカリーショップ ロンドン』の基本情報
住所 | 岐阜市日ノ出町1-10 ナカデビル1F |
営業時間 | 8:00~19:00 |
定休日 | 木曜 |
TEL | 058-262-6005 |
WEB | http://www.moco-london.com/ |