アノ人に会いにゆく。vol.11～『東光寺』彦坂怜宗さん・裕貴さん～

aun編集室のメンバーが、岐阜の気になる人に会いに行くインタビュー企画『アノ人に会いにゆく。』第11回は、山県市にある東光寺の住職の彦坂怜宗（れいしゅう）さんと寺嫁・裕貴さん夫妻。お寺の取り組みや地域に対する思いなど、そのお人柄にも迫る話を伺いました。

由緒ある寺院の新たな試み

東光寺の本堂室町時代から500年続く臨済宗妙心寺派寺院『東光寺』。貴重な檜皮葺の屋根の本堂は、市の文化財に指定されています。四季折々の風景が美しく、秋になると中庭のドウダンツツジが真っ赤に染まり見頃を迎えます。

東光寺のイベントの様子この由緒ある寺院はこれまで紡いできた歴史を継承しながらも、〈お寺×イベント〉という新たな試みを進めています。坐禅や写経といった禅体験をはじめ、和菓子づくりやキャンドルづくりなどのワークショップを開催。さらには縁日とマルシェをかけ合わせた夏祭りや、気軽に日本の伝統文化に触れられる月見茶会など、老若男女が楽しめるイベントを企画しています。これまでにないお寺のあり方を発信されているお二人にお話しいただきました。

誰しもが足を運べる寺づくりを。

――岐阜県でイベントをされているお寺ってなかなかないと思うんです。東光寺さんはどんなきっかけでイベントを始めたんですか？

怜宗さん：もともと、アットホームな雰囲気のお寺で育ったことが原体験にあります。学校から帰ると、檀家さんがおかえりと声をかけてくれるような温かい環境でしたので、人の交流があるお寺っていいなあと思っていました。５年前に東光寺の住職として京都市から移り住んだ時に、若者の地元離れを嘆く檀家さんから地域を盛り上げてほしいと相談がありました。70～80代の檀家さんから、幼い頃に東光寺で遊んだ話や和尚さんとの思い出話などを聞いて、ここが皆にとって大切な場所なのだと感じました。今の子どもたちにもいろいろな経験をしてもらえるような、多世代に親しまれるお寺でありたいと思ったんです。

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山県市　東光寺｜Tokoji Zentemple(@fujisan.toukouji)がシェアした投稿

裕貴さん：地域の女性を集めて意見を聞くと、ヨガやドライフラワーの正月飾りづくりなどおしゃれなワークショップをしたい！という声が挙がりました。そこで少人数のワークショップや教室をお寺の境内でやり始めたんです。

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――地域の方の願いもあって始めることにしたんですね！今年から大きなイベントも開催されているんですよね。

裕貴さん：地道にワークショップを続けていたのですが、若い人たちがどんどん山県市から出ていく状況に、お寺だけでできることに限界を感じていたんです。そんな時に知人からマルシェをやってみてはとの提案があり、私自身が猫好きなこともあって「ねこ日和」というマルシェを企画しました。保護猫活動を知ってもらうことを目的に、知人や地元の子どもたちと協力して猫にまつわるクイズやスタンプラリーを用意しました。さらに若者にアプローチできるよう、InstagramやTikTokでの発信に力を入れたり、若い世代に人気の店に声をかけたりしました。

東光寺のおふたり

――当日の様子はいかがでしたか？

怜宗さん：この田舎のお寺に、市内外から700人もの方が集まってくださいました。地域の人たちも「東光寺がこんなにたくさんの若い人たちであふれているの初めて見た！」とすごく驚いていて。檀家さんが喜んでくれてとても達成感がありました。こういったイベントをブラッシュアップさせながら今後も続けていきたいです。

東光寺のゆうきさん

――イベントを開催してみて、何か変化はありましたか？

怜宗さん：地元の人が山県市にこんなお寺があったんだ！と、七五三参りや成人式の前撮りなどロケーション撮影の場所として利用してくれることが増えました。イベントがない日でも、SNSを見た若いカップルが県外からふらっといらっしゃるのでつながってきているなと感じます。

裕貴さん：岐阜ではお寺は墓参りや法要する場所というイメージがあると思います。ですが京都だと、お寺がデートスポットとして当たり前になっていて。若い子がカフェ巡りと同じ感覚で、お寺を巡ってお茶を飲んでいる場面をよく見かけました。岐阜でももっと気軽に足を運んでもらい、伝統建築や文化への理解が深まるきっかけになればいいなと思っています。