アノ人に会いにゆく。vol.8~『ツバキラボ』和田賢治さん~

ツバキラボ和田さん
※掲載情報は2023年6月30日時点のものです。

aun編集室のメンバーが、岐阜の気になる人に会いに行ってインタビューする企画「アノ人に会いにゆく。」第8回は、地域の木材を利用した製品づくりやイベント企画、会員制のシェア工房を運営する『合同会社ツバキラボ』代表の和田賢治さん。木と地域を結ぶ、さまざまな取り組みへの思いを伺いました。

 

木の加工から企画までプロデュース

ツバキラボ外観

豊かな木々に囲まれた岐阜市椿洞に工房を構える『合同会社ツバキラボ』。林業や木工、木にまつわる総合的な知識をもとに、樹木ごとの性質や正しい加工方法を分析し、これまで活用されてこなかった木材の活用法を提案しています。専門の機材をそろえ、製材から乾燥、加工までワンストップで対応。さらに、週末に作業スペースを開放する会員制シェア工房は岐阜県で初めての取り組みだと注目を集めています。

木工所の枠を超え、木と人、地域に向き合う和田さん。どのような思いで木の新しい価値を生み出しているのでしょうか。

人生の豊かさを見つめ直し、木工の道に

ツバキラボ和田さん

――昔から木工には関心があったのでしょうか?

和田さん:もともと木工への興味は全くなくて(笑)。28歳までは大手自動車メーカーで働いていました。激務で心身ともに疲れているとき、ふと家を見渡したら大量生産の家具に囲まれていて。木製だと思っていたテーブルが、木目をプリントしたシールを貼り付けたものだと知って、それがショックだったんです。ですが、父親から譲り受けた学習机だけは違いました。本物の木は存在感も安心感も全くの別物。長く大切に使われるものの価値や、人生の豊かさに気づかされましたね。そして、「自分が本当にやるべきことはこれだ」と直感し、木工の世界に飛び込みました。

ツバキラボ作業中

――異業種からの挑戦だったんですね。知識や技術はどこで身につけましたか?

和田さん:高山市にある木工職人養成塾「森林たくみ塾」で2年間修業して、木の加工を学びました。その後、美濃加茂市の「岐阜県立森林文化アカデミー」で5年間教員を務め、木工や情報発信、ビジネスに関する授業を担当しました。その後独立して、『合同会社ツバキラボ』を設立したのが2017年のことです。

岐阜県初!つくる楽しみが広がるシェア工房

ツバキラボ内観

――どのような思いが詰まっている会社なのでしょうか?

和田さん:単にものをつくるのではなく、木を生かした事業の展開を目指しています。まずたどり着いた一つが会員制シェア工房の運営です。一般の方が木を使ったものづくりをする場合、機械や材料がなかったり、騒音が気になったりと、なかなかハードルが高いですよね。そこで、『ツバキラボ』の作業スペースと機械、工具を使ってもらえば、もっと気軽に木工を楽しんでもらえるのではとシェア工房を思いつきました。機械の使い方や木工の基本をきちんと受講した後、自由に作品づくりを楽しんでもらっています。

ツバキラボの木工旋盤

――本格的な機械を使って木工ができるのはうれしいですね。どんな方が利用されていますか?

和田さん:会員は20~70代の100名ほど。県外からいらっしゃる方が多いですね。趣味として始めて、今ではクラフトフェアに出品される方もいます。機械などの設備はもちろん、分からないことは私たちスタッフが教えますので、安心して作業できる環境になっています。皆さんの「つくりたい」という思いと、暮らしの道具を自分の手で生み出す喜びをサポートしたいと思っています。

地域材を活用し、新たな価値を創造する

ツバキラボの製材所

――木を生かした事業として、他にどんなことをされていますか?

和田さん:地域の木材や個人宅の庭木、公園で伐採された樹木など、活用されていない木でも価値を生み出したいと活動しています。木の生まれた背景を知り、伝えられるような製品づくりやコンサルティングを行っています。

ツバキラボの和田さん

――地域材の活用に目を向けた理由を教えてください。

和田さん:もったいない、というのが大きな理由です。日本は世界有数の森林大国ですが、産業では9割以上外国材に頼っています。また、里山整備や、個人宅で伐採される樹木は、どんなに立派でも多くが廃棄されている現状があります。でも、その木たちはみんな物語を持っている。木が持つ背景や文化、そしてお客様の思いをつなげたいんです。

ある時、「子どもが産まれた時に植えた木が大きくなり、伐採したけれど処分するのはもったいないからどうしよう」と相談を受けたことがありました。その木を食器にしたらとても喜んでもらえて。企業などからも「地域の木を使って何かできないか」と相談をいただくことも多くあります。

地域の木と子どもたちをつなぐ木育プロジェクト

アベマキ学校机プロジェクト

――ほかにどんな相談がありましたか?

和田さん:少しさかのぼりますが、岐阜県立森林文化アカデミーで教員を務めていた頃、美濃加茂市役所の職員から、「里山整備の一環として、アベマキを有効活用できないか」と相談を受けました。アベマキは、堅くて重く、割れやすいため利用価値が低いとされ、里山で放置されていたんです。

木材として活用されている実例が無かったので、大きな挑戦でした。特に苦労したのが乾燥。何度も実験を重ね、数カ月かけてやっと木工として使えるようになりました。そして、このアベマキで、地域の子どもたちが使うものを作りたいと提案をしました。そこで始まったのが、「アベマキ学校机プロジェクト」です。

アベマキ学校机プロジェクトの様子

――「アベマキ学校机プロジェクト」では、どんなことをしているのでしょう?

和田さん:5年生になると伐倒現場を見学して、アベマキや里山の現状を学んでもらいます。そして、6年生では、製材、乾燥、加工までの過程を体験。子どもたちがつくった天板は、新1年生に贈られます。そして、同じ机で6年間過ごし、卒業記念品として天板をブックスタンドに加工してプレゼントしています。子どもたちの驚きの表情や感動している様子はいつ見てもぐっときますね。

地域の自然に触れ、その資源を使ったものづくりを体験し、一緒に過ごした経験が、地元への愛着や誇りにつながれば何よりです。きっと、その後の人生においての心の支えになってくれると信じています。

木工作品

――今後の目標を教えてください。

和田さん:地域の資源を地域内で循環させる仕組みをつくりたいと考えています。産業廃棄物として処分される木を資源として生かしていきたい。そして、より多くの人に、木のある暮らし方を提供していきたいです。身の回りにあるものを自分で作ったり、顔の見える誰かに作ってもらったりすることが、当たり前の世の中にしたいですね。

――木のある暮らしを身近に感じてもらうために、イベントもプロデュースされているんですよね?

 

 
 
 
 
 
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和田さん:そうなんです。2023年7月28日(金)~30日(日)に「WOOD GO!」という木育イベントを岐阜市で開催します。「“木”ってたのしい!おもしろい!」をテーマに、ワークショップや展示など楽しい企画が盛りだくさんです。皆でジャングルジムを組み立てたり、プロの職人さんの木製バット削りを間近で見られたりします。ぜひ足を運んでいただけたらうれしいです。情報はInstagramで更新していますので、そちらをご覧ください。

 

木と人、地域をつなげるさまざまな取り組みを行う和田さん。大量生産・大量消費の時代だからこそ、本物の木、そして物語のある地域の木の価値を感じました。「木のことならどんなことでも相談できる場所」を目指す和田さんの活動に、ますます目が離せません。

 

『ツバキラボ』の基本情報

住所岐阜市椿洞1228-1
営業時間9:30~16:30
定休日第3日曜
TEL058-237-3911
駐車場あり
WEBhttps://tsubakilab.jp/
Instagram@tsubakilab
YouTubehttps://www.youtube.com/@tsubakilab

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