アノ人に会いにゆく。vol.10~『本屋メガホン』和田拓海さん~

店主の和田さん
※掲載情報は2023年9月13日時点のものです。

aun編集室のメンバーが、岐阜の気になる人に会いに行ってインタビューする企画「アノ人に会いにゆく。」第10回は、社会的マイノリティーについて書かれた本をメインに扱う新刊書店『本屋メガホン』を今年オープンした和田拓海さん。オープンした経緯や大切にされている思いを伺いました。

 

あらゆる小さな声に寄り添う本屋

本屋メガホンの外観

2023年6月、岐阜市柳ケ瀬商店街にあるビルの貸しスペースに週末限定でオープンした『本屋メガホン』。コンセプトは、「小さな声を大きく届ける」。本屋がメガホンのような役割を担って、社会の周縁で生きづらさを抱える人たちの声を広く届けたいという願いが込められています。

本屋メガホンの内観

――早速ですが、この店ではどんな本を扱っているのでしょうか。

和田さん:性的少数者(LGBTQ)や障がい者、フェミニズムなどマイノリティーに関する本や、個人発行の冊子「ZINE」などを100~150冊ほど取り扱っています。いろんな人に問題意識を持ってもらいたいので、できるだけジャンルの偏りがないように仕入れています。

『三人が苦手』ZINE
『三人が苦手vol.2』(黒田編集・皆本夏樹)/880円(税込)

――人気の本はありますか?

和田さん:この『三人が苦手』はよく売れていますね。3人以上の集団が苦手な著者2人が作っているZINEで、社会運動をしている人にインタビューをしています。“三人が苦手”というタイトルに惹かれて買っていく方が多いです。

1冊の本をきっかけに開業を決意。

『ぼくをくるむ人生から、にげないでみた1年の記録』
『ぼくをくるむ人生から、にげないでみた1年の記録』(少年アヤ/双葉社)/1,760円(税込)

――こうしたお店を始めようと思ったきっかけは何ですか?

和田さん:きっかけは『ぼくをくるむ人生から、にげないでみた1年の記録』(少年アヤ/双葉社)という一冊の本との出合いでした。これはゲイである著者が、ゲイとして生きることの困難や違和感に真正面から向き合ったエッセイです。これを読んだ時、書かれている内容が当時自分の考えていたこととあまりにも似ていて、まるで心の中のモヤモヤが言語化されたようで、とても衝撃を受けました。

――その本から何を感じ、行動を起こしたんですか?

和田さん:それまでは、自分に嘘をつくことも、大切なパートナーをいないものとして扱うことも、そうするしかないと諦めて生きていました。しかしこの本を読んで、「この状況をどうにかしたい」とずっと怒っていた自分の存在に気づかされたんです。自分自身を問い直すきっかけをくれたこの本のように、生きづらさを感じている人にとって救いになるような一冊と出会える場所が、街に一つでも多くあった方がいいんじゃないかと思い立って、本屋を始めることにしました。

手元

――本屋を始めてみて、実際にどんなお客さんがいらっしゃいますか?

和田さん:SNSをメインに発信しているので、若い世代を中心に、社会問題に関心がある方や当事者の方が多いです。新聞など、他のメディアに取り上げていただいてからは年配の方も来てくださいます。「岐阜にこういうお店ができてうれしい」と言ってもらえることもちょくちょくあって、店を開いて良かったなと感じますね。悩みを抱えた人が弱いままでいられる場所を目指しているので、家族や学校、職場では話しにくいことを話せるような雰囲気になればいいなと思っています。

本屋は自分にとっての社会への抵抗の手段

店主の和田さん

――開店からおよそ4ヶ月が経ちましたが、やってみていかがですか?

和田さん:商店街の1階というオープンな場所で、敬遠されがちなジャンルを扱う本屋を開き、マイノリティー当事者が店に立つ。これを僕は自分なりの社会運動だと捉えていて。店をきっかけに当事者の人とつながれたり、興味を持ってくれる人がいたりと少しずつ声が集まり始めたので、ここでやる意義を実感しています。

『透明人間さよなら』と『生活と怒号』
『透明人間さよなら』(和田拓海/本屋メガホン)/880円、『生活と怒号』(和田拓海/本屋メガホン)/880円(すべて税込)

――和田さん自身もZINEの制作に携われているそうですね。

和田さん:これまでに『透明人間さよなら』と『生活と怒号』という2つのZINEを発行しました。『透明人間さよなら』はゲイであることを隠し、透明人間のように生きてきた自分との決別をテーマにしています。日々感じていた違和感や、本屋を開業する理由を書き留めました。またその制作を通して、自分で言葉を書いて製本、販売、流通させることが、僕にとって、不条理に抵抗する一番の方法なんだとしっくりきて。そうした体感を書いたのが、2冊目の『生活と怒号』。自分なりの抵抗の手段を身に付けることは、無理せずに生活するうえでとても大切なことだと思います。

 

――最後に、これからやりたいことはありますか?

 

 
 
 
 
 
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和田さん:今後は誰かと協働でZINEを作ったり、イベントをしたりしたいです。直近では10月21日(土)に「マイノリティとして書くこと、読むこと、綴じること」というイベントを開催予定です。このイベントでは、編集者・ライターである小沼理さん、東京で「lonliness books」という書店を営む潟見陽さんを『本屋メガホン』にお招きして、トークイベントと、テーマに関連したショートフィルムの上映会を行います。興味がある方はぜひお気軽にご参加いただけたらうれしいです。

 

生きづらさを抱える人にそっと寄り添ってくれる『本屋メガホン』。小さなことでもアクションを起こせば、少しずつ社会を変えられる。和田さんの話を聞いて、そんな気持ちになりました。Instagramでは店で取り扱う本やイベントについて発信中です。こちらもぜひチェックしてみてくださいね。

 

『本屋メガホン』の基本情報 

住所岐阜市小柳町18-6デイリーこやなぎ1F
営業時間13:00〜19:00
営業日週末営業 ※営業日はInstagramにて要確認
オンラインショップ
https://booksmegafon.stores.jp/
Instagram@books_megafone

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