陶芸家 村上雄一さん
食器棚の最前列で活躍する心地の良いうつわを。
「うつわは料理の引き立て役。料理を盛り付けて完成するんです」と柔らかな表情で話す陶芸家の村上雄一さん。彼の手掛ける皿や茶器は、端正な造形ながらも、すっと手に収まる柔らかな風合いを持ち合わせる。
もともとは漆塗りなどの伝統工芸品が好きだったという村上さん。高校卒業と同時に、工芸品の産地を巡る旅に出ると、沖縄県読谷村で陶芸家の山田真萬さんに出会う。「やちむん」と呼ばれる沖縄の人々の明るさが宿ったような豊かな色彩と大胆な筆遣いのうつわに心を打たれ、弟子入りを志願。陶芸家の道を歩み始めた。山田さんのもとで働きはじめて3年目のこと。人生の伴侶に巡り会う。ある時、彼女の実家に招かれた際、母親が民藝品や洋食器、作家物ものなどをセンスよく取り入れて楽しげに料理を盛る姿を目にすると、気持ちに変化が生まれた。もっと色々なうつわを学びたい。25歳で多治見市陶磁器意匠研究所に入学。その後、土岐市に自宅兼工房を構えた。
地元の原土を混ぜることで温かみのある白色を表現した白磁の小皿やカップ。淡い色合いの釉薬と窯変による風合いの妙が美しいプレート。村上さんの作品は、一人の作家が作ったとは思えないほど表現の幅が広い。やきものは土や釉薬を自由に組み合わせることができ、刷毛目や粉引といった加飾の技法も数多くあるため、多様な質感や色を表現することができる。「自分の作風はこれ!というものが僕にはなくて。使って心地良いと思えるものを作りたいんです」。どんな時に使うのか、どんな料理を盛り付けたいか。そこに思いを巡らせ、最適な素材や技法を選ぶのが彼のスタイルだ。作品の多くは水に強く、強度の高い磁器だが、茶碗は食事中にご飯が冷めないようにと保温性に優れる陶器に。また、オーブンで気兼ねなく使えるうつわも食卓に必須と、生地に陶石と土をブレンドした半磁器の耐熱皿をも作り上げる。
使い心地を追求する姿勢は形状にも現れる。プレート皿は汁気のある料理も安心して盛れるように縁をしっかりとる。ティーポットは洗いやすさを考慮し注ぎ口に直接茶こしを取り付け、ソーサーは小皿としても使えるようにとくぼみを無くす。一見シンプルに見える作品も、とことん暮らしに寄り添って隅々までデザインされているからこそ、料理を盛り付けた時の美しさや使用感の心地良さには思わずため息がこぼれる。
「ここぞ、という特別な日に使ううつわも素敵ですが、僕の作品は日々の暮らしの中でどんどん使ってもらいたいですね」。どんな料理も引き立てる名バイプレイヤー。今日はどのうつわに盛り付けようかと考える時間は、何気ない日常に心弾むひとときを与えてくれる。
基本情報
URL | https://yuichimurakami.com/ |
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その他備考 | 【買えるところ】 市之倉さかづき美術館、PRODUCTS STOREなど |
掲載した情報は2020年12月25日現在のものです。