陶芸家 棚橋祐介さん

とらわれず、自由に。古くて斬新な唯一の陶器
その器には独特な世界観が宿る。表面に入るひびのような模様の「貫入」は時に濃く、時に淡く浮かび上がる。フォルムの曲線はどこか気高く、ノスタルジックさが漂う。

気負うところのない、自然な佇まいの棚橋祐介さん。高校卒業後、親戚の影響もあり、多治見工業高等学校陶磁科学芸術科へ進む。「製法は勉強したかったけど、作りたいものはなかったですね」。同級生が熱く語る理想の器の話を聞く方が楽しくて、とくるくるした瞳で笑った。

その後、瀬戸市新世紀工芸館の工房であえて一人で、土に触れて過ごす。そこで自身の欲するものに気付いた。シンプルで、モノクローム。多治見の貸し工房studio MAVOに入ってからは、友人とドラム缶で器を焼いたり、木の実で染色したり。人に恵まれ遊ぶうちに着地点が見えてきた。「骨董は汚れているからかっこいい。初めから汚そうって」。織部焼の製法からヒントを得て、物足りなかった貫入のひびをドングリで染める「古色」を施した。

「あえて想像通りにならない工程にしています」。例えば長石や灰など多種類からなる釉薬は、成分を不安定な配合にすると、時に剥がれたような表現が出る。季節で染料の染まり具合も変化する。それが面白い。「でも今だに何作ろうか決まってないですね」と笑う。カサカサしたもの、艶のあるもの。50個に1個ほどの割合で、釉薬や焼成温度などをテストして自身の好きな仕上がりを求め、模索する。「いつもふわふわしてるので」。だがそれは、とらわれずに自由であるということ。内なるものから、あの無二が生まれるのだ。
基本情報
その他備考 | 【販売ショップ】 pand 住所: 岐阜市吉野町3-17 2F TEL.058-263-3720 営業時間:12:00~18:00 定休日:日・月曜 ホームページ:http://pand-web.com/ |
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掲載した情報は2016年9月11日時点のものです。
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