日本料理
後楽荘
こうらくそう

代々紡がれてきた、もてなしの心が宿る
岐阜城を頂く金華山を借景とした庭園の見事さに、感嘆の声が漏れる。『後楽荘』の一室からの眺めだ。

斎藤道三や織田信長が、金華山の麓に築いた城下町「岐阜町」は、江戸時代には商工業の町として栄えた。店の歴史はその頃の賑わいから始まる。初代の矢野嘉右衛門が蝋燭(ろうそく)・油商「伊勢嘉商店」を興して財を成す。明治後期には風流人の4代目がこの地に茶席と庭園を築造し、茶の湯を嗜んだ。「その建物を生かし、昭和27年に5代目が料理旅館を開きました」と主人の矢野桂さん。それから、幾多の人々をもてなしてきた。

門を抜けて砂利石の道を進むと、「後楽」の暖簾が揺れ、120年、この場所に佇む日本家屋が現れる。「お客様には時間の流れをゆっくりと感じていただきたいですね」と女将の智子さん。季節の訪れを知らせる設えや生け花を、そんな思いで日々、整える。「今があるのはご先祖様のおかげです」。4代目が建てた「後楽」の小間の「無為庵」などの茶室、日本庭園を望む部屋の数々は、日常を忘れさせるような、日本の美を宿す。

供されるのは、鮎や飛騨牛などの岐阜の食材を取り入れた奥の深い会席料理だ。そして、祝い事や法事、接待などの催しに合わせて掛け軸や器はさりげなく替えられ、部屋ごとの呼吸に合わせて配膳される。「茶の湯のもてなしの精神に通じます」と桂さん。客は気付かぬうちに安らぎ、思い出とともに帰っていく。

2年前からはその景色や歴史に想いを馳せ「岐阜町ランチ」を始めた。金華山や岐阜城、長良川を器や料理で表現し、桂さんが打つ蕎麦や岐阜町の老舗の食材が姿を見せる。

幼少の頃からこの建物に住む智子さん。「ご先祖様が庭に植えたヤマコウバシは翌年に芽が出るまで、枯れても絶対に葉が落ちないんです。代々繋がっていくように、との願いを感じます」。先祖を想い、募る愛おしさを胸に、客人を温かく迎え入れる。
基本情報
住所 | 岐阜市本町1-31 |
---|---|
TEL | 058-264-0027 ※要予約 |
営業時間 | 11:30〜14:00、17:00〜22:00 |
定休日 | 月曜 |
駐車場 | 10台 |
URL | http://www.kouraku.com/ |
掲載した情報は2016年3月14日時点のものです。
PICK UPおすすめ記事
-
グルメ
- 更科
昭和3年の創業以来、地元で親しまれてきた店。客の8割が注文するという名物「冷やしたぬき」は、多い日は800杯以上を売り上げる。
-
グルメ
- cheese cake mania!
平成14年にオープンしたチーズケーキ専門店。「タルト・塩チーズ」や、濃厚なクリームチーズを贅沢に使ったずっしりとした「ニューヨークチーズケーキ」など15種類以上が並ぶ。
-
グッズ
- stoffa
綿やリネンの布を使い仕上げた独特の風合いを持つバッグは、くたりとして手に馴染むが、裏地まできっちりと仕立てられていて丈夫だ。
-
カルチャー
- ギャラリー 独楽
モダンなコンクリート打ちっぱなしの空間。「シンプル、仕事が丁寧である、使いやすい」という点にこだわって厳選された作家作品は、いつ訪れても見応えあり。
-
レジャー
- 湯之島館
敷地面積5万坪もの庭園に静かに佇む老舗旅館。昭和6年の創業時から受け継がれる木造3階建ての数寄屋造りの本館は、国の登録有形文化財に認定されており、その日本建築の美しさや荘厳さに思わず圧倒される。
