石山人工房 代表 所 一郎さん

所さん

〈PROFILE〉
揖斐郡大野町出身。81歳。20代の頃から石や美術に精通する師とともに世界各地に足を運び、石材の収集・調査を始める。昭和45年に建築石材会社を立ち上げ、数々の新しい建築石材を開発。病を機に会社を閉じ、平成8年に「石山人」の屋号で工房を設立。それまでに培った技術と知識をもとに、石から茶碗を作るという独自の技法を確立した。平成16年、厚生労働大臣より「現代の名工」授賞。令和元年、「黄綬褒章」受章。

より良い作品を作りたい。夢は尽きんのやわ。
器
石で作られた、重厚感のある抹茶茶碗。手にすれば、その凛々しい佇まいに思わず背筋が伸びる。石から器を生み出すという独自の技術を確立し、長年にわたり作品を作り続けている職人・所一郎さん。「今でこそ石の器が珍しいかもしれんが、歴史を辿れば石は、人類の芸術の原点やと思うんです」。
所さんは昭和45年、「これからの時代、木や土以外にも新たな建材が求められるだろう」と建築石材を開発する会社を設立。世界各地で石材を採掘し、成分の調査、加工法の実験などを行い、様々な建築石材を世に送り出してきた。だが、がむしゃらに働き続けていた50代のとき、仕入れのため訪れていたポルトガルで、大動脈瘤による不整脈で突然倒れる。約半年間病床に伏し、やむを得ず会社も畳むことに。「寝とるときにね、思ったんです。いろんな土地を掘って荒らして、これまで神さまに手を合わせることもせんかった。それではいかんと」。
工房
体調が回復してからは、自宅に工房を構え、石の抹茶茶碗づくりに没頭。茶人・千利休が好んだとされる侘びた風情を持つ器を、石で再現しようと毎日のように創作に励んだ。「茶道は奥が深く、神仏の世界にも通じているんです」。
作った数々の作品は、何年もかけて国内外の100以上の寺社に納めて回った。近年は石の器をもっと広く知ってもらいたいと、海外の展示会に出品したり、SNSで新作を発表したりするなど、活動の幅も広げている。
作業中
石碗の素材となる原石は主に、富士火山帯の箱根山で採掘した火成岩を使用する。のみと金槌で原石を割り、旋盤で削って繊細に形を整えたら、特殊なガス窯で高温焼成。「焼くことで石から釉薬成分が溶け出し、表面に“景色”が生まれる。さらに何度も焼けば、色に深みが増すんです」。
石山人の窯
どの工程も時間と手間を要するため、1カ月で作れる数は2~3個が限度だという。「一つ作品ができると、もっと良い作品を作りたくなる。夢は尽きんのやわ」。そう笑う所さんの瞳には、少年のような光が宿っていた。

基本情報

住所 羽島市足近町1-103-1
TEL 090-3447-1621
営業時間 TELにて要確認
定休日 TELにて要確認
掲載した情報は2019年12月11日時点のものです。
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