ヤイリギター
常に信念を胸に “本物”のギターを
電灯が点々と灯る工場。作業台に向かう職人たちは、寡黙だ。可児市にある『ヤイリギター』は昭和10年創業の「矢入楽器製作所」を継いだ2代目の矢入一男さんが設立したギターメーカー。
戦後、木琴などの教育用楽器なども手掛けていたが、一男さんは「これからはギターの時代が来る」と、本場のギター作りを学ぶため、単身でアメリカに渡る。そこで当時、日本製の量産ギターがまるでおもちゃのように扱われている現状を目の当たりにして決意した。「“本物”を作らないかん」。
帰国後、職人と一丸となってギター作りに専念。次第に誰もが知る国内外の著名アーティストらに認められ、60年代後半のギターブーム到来でアマチュアにまで広くその名が知られると、社名を「ヤイリギター」に改めた。
ヤイリギターの大きな特長は、天然木にこだわること、全工程を職人の手で作ること、永久保証であることだ。工場内の倉庫には、長年買い集めた天然木がうず高く積まれている。
現在3代目を継ぐ矢入賀光さんは言う。「父はとにかくいい木を集めた。うちの機械はみんな古いでしょ、設備投資にかける代わりに全部木につぎ込んだんですよ(笑)。でも、それが今、大切な財産。いい木がないとギターは作れませんから」。
木は少なくとも2年、長ければ10年以上も自然乾燥した後、ようやくギターに生まれ変わる。「樹齢200年の木もあります。だからいい楽器を作り、その先も長く生かしてあげたい」。
木は少なくとも2年、長ければ10年以上も自然乾燥した後、ようやくギターに生まれ変わる。「樹齢200年の木もあります。だからいい楽器を作り、その先も長く生かしてあげたい」。
一本のギターが完成するまで約3カ月。切断、曲げ、接合など音や品質を左右する数多の工程に、30人ほどの職人が熟達した技を行使する。側面のサイド材を熱して特殊な機械で曲げる人、ボディと持ち手のネックを繋ぎ合わせる人、ネックを小刀やカンナで削る人。
真剣な眼差しに、職人のプライドが覗く。そして休憩時間になると、ふと誰かがギターの弦を鳴らす。彼らの傍らには、いつも音楽がある。
ヤイリギターでは販売終了となったシリーズも含め、すべての修理を永久保証する。過去には地震で無残に折れてしまった思い出深いギターの修理を頼まれ、リペア専門の職人が完璧に修復したこともあったという。
「いいものを使い、きちんと時間をかけ、本物を作る。それがうちのポリシーです」。信念のもとにここで生まれたギターが、音楽を愛する誰かのもとへ届く。
基本情報
住所 | 可児市下恵土3230-2 |
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TEL | 0574-62-1138 |
駐車場 | 15台 |
URL | http://www.yairi.co.jp/ |
その他備考 | 工場見学:毎週土曜の①10:00~、②13:30~(約1時間)※各回定員10名、要予約 |
掲載した情報は2019年9月9日時点のものです。