懐かしの購買パンは青春時代の味『武蔵屋パン』(岐阜市)
高校生の頃、購買パンが楽しみだったという方に朗報です。思い出の手作りパンと再会できる工場兼直売所があると聞き、取材にうかがいました。
約70年にわたって高校購買向けのパンを製造
高校の購買向けパンを製造・販売する『武蔵屋パン』は、名鉄名古屋本線の茶所駅近くにあります。味のあるレンガ調の外観と、大きく店名が書かれたファサードが目印です。創業した昭和22年から岐阜市近郊の高校で購買パンを販売し続けており、一度は食べたことがあるという方も多いことでしょう。
「もともと、僕はこの会社に出入りする業者だったんですが、跡継ぎがいないということでご縁があって事業を引き継いで10年ほどになりました。コロナや原料高騰などの影響で高校向けの販売をやめる業者さんも増えていますが、育ち盛りの学生さんの喜ぶ顔を見るのがうれしくて、なんとか頑張っています」と話してくれたのは、代表取締役を務める池田和繁さん。現在は、工場から車でおおよそ30分圏内の高校や大学で購買パンを販売しています。
しかし、近年は少子化や新型コロナウイルス感染症拡大に伴う休講措置などの影響で、売上が大幅に減少し、苦境にあえいでいました。そこで、令和3年の10月から始めたのが一般客向けの直売。すると、口コミで評判が広がり、懐かしの味を求めて足を運ぶ客が少しずつ増え、メディアにも取り上げられるように。中には、遠方からここだけのために来る人もいるそうです。
こちらは開店前の店内。各スタッフが昼間に高校での販売を済ませてから工場に戻り、急ピッチで売場を整えていました。「午前授業だったから学生が少なかったわ」「今日はメロンパンがすごく売れたの」などと準備をしながら情報交換する場面も。学校の行事などによって製造数を調整しているため、先生や学生と日頃からコミュニケーションをとることも大事だそうです。
約40種類のパンに加え、学生に人気の惣菜も登場
それでは、日替わりで登場する約40種類のパンのうち一部をご紹介。まずは、学生から年配の方まで人気という「あげぱん」から。コッペパンを揚げ、シナモンと砂糖をまぶした永遠のロングセラーは、食感のコントラストと程よい甘さが癖になります。
こちらもファンが多いという、揚げたトーストであんこやカスタードクリームを挟んだ「あん食」と「クリーム食」。ビジュアルだけでなく、POPに書かれた“糖分補給の味方”というコピーにも食欲をそそられます。勉強や部活で疲れた時にはもってこいな一品。その他にもメロンパンやあんパン、ウインナーパンなどお値打ちな品がそろいます。
また、高校生が好みそうな惣菜パンだけでなく、一般家庭向けの食パンも。予約して購入される方が多いそうで、取材当日も予約分だけで完売していました。食パンに限らず気になる品を確実に購入したい場合は、前日に予約してからの来店がおすすめです。
平日はパンだけでなく、そぼろ丼や焼きそばなど手作りの惣菜も店頭に並びます。「惣菜は特にチャーシュー丼が人気ですね。ただ、最近の高校生は舌が肥えているので、商品開発も大変(笑)。昭和のパン屋らしさを大事にしつつ流行にもアンテナを張っています」と池田さん。
取材中も部活帰りの高校生や近所の年配客まで、幅広い世代の方が訪れていた『武蔵屋パン』。若者にお腹いっぱい食べてほしいという気持ちや人情を大切にしながら、時代の変化に合わせて、新たな道を歩んでいます。青春時代に親しんだパンをもう一度食べたいという方も、レトロなパンが新鮮に感じるという方も、ぜひ一度足を運んでみてください。
『武蔵屋パン』の基本情報
住所 | 岐阜市祈念町2-26-1 |
営業時間 | 14:00頃~17:30頃(日曜は12:00頃~16:00頃) |
定休日 | 土曜 |
TEL | 058-276-4035 |
駐車場 | 有り |
Instagram | @musashiyapan |