WALK ABOUT

店主の久徳和彦さんは大学卒業後、金公園沿いの服屋で10年間働いていた。一度、ファッションとは別の世界も見てみたいと一念発起。趣味のカメラを持って1年ほど海外を旅した。タイやラオス、ネパールにインド。各国の非日常的な景色は刺激的だった。帰国後は、興味のあった農業の世界へ。池田町に住む知り合いの農家で2年間、野菜作りに勤しんだ。平成25年、自らの原点であるアパレルを中心に、ライフスタイルを提案するこの店を開く。

店の大部分を占める洋服は、男女問わずトレンドに左右されないデザインと日本製にこだわる。「縫製の良さで有名な岡山県倉敷産のものが多いですね。長く使ったときの風合いが違います」。そのほか、中央アジアの伝統織物キリムなどの民族雑貨、はちみつや米も扱う。「衣食住すべての観点からいいなと思う物を提案したくて」。夏と冬には、働いていた農家から新鮮な野菜が毎週届く。「ファッションと野菜の組み合わせって面白いでしょ」と笑顔を見せる久徳さん。野菜が軒先に並ぶと、普段店に訪れない年配者が声をかけてくれることも多い。

音楽好きの仲間と長年ライブイベントも企画する中で、家族連れも町で気軽に楽しめる場所があればと、八幡神社で飲食や物販のほか、射的やワークショップなどが集まる野外マーケット「ミチクサエンニチ」も主催する。開催日である奇数月の第一土曜日は、店の前に出て訪れた人と会話をしたり、写真を撮ったり。彼の周りには、いつも和やかな空気が流れている。

WALK ABOUT＝歩きながら。店には今まで彼が人生の歩みの中で出会い、心の糧となったものたちが、確かな意味を持って並んでいる。それらが新しい出会いを引き寄せ、ここからまた、歩みが広がっていくことだろう。