吹きガラス作家 安土草多さん

ガラス作家安土草多さんの作品

日常に静かに収まる美しさと存在感を併せもつグラスや照明
高山市内の丘陵地。その雑木林の中に安土草多さんの工房はある。耐火レンガを積み自作した窯の中が赤々と燃えている。「炉から出した時のオレンジに発光するガラスが美しくて」。父でガラス作家の忠久さんに製法を教わり、ガラスを吹き始めて14年。何度見てもそう感じると笑う。
ガラス作家安土草多さんのグラス
安土さんが作るグラスは、形は奇をてらわずベーシックで、暮らしの中にすっと収まる。飲み口はこの上なくぴたっと馴染み、優しい。だが、個々にある存在感。型によって作られる端正なフォルムと同時にあるのが、炎とガラスが生み出す、細やかな表面の揺らぎ、緩やかな歪み。
ガラス作家安土草多の工房で作品を作る様子
グラス作りが始まると工房の空気が変わった。時間にして小さいものでわずか6分。吹き竿で炉から光るガラス玉を取り、回しながら吹く。鉄の型へと吹き込み、すうっと抜くと、まだ一部は光り、まるで生まれたばかりのような純粋さを持つ原型が現れる。焼き戻しの炉で形を整え、洋バシで口を広げて仕上げる。体に染み付いた、なめらかな動き。初めのガラスの勢いを留めるため、各工程は1回のみと決めている。驚くことに温度計や定規は使わない。窯の炎を読み、ハサミが入りやすい箇所を切って高さとし、飲み口は力を入れずに心地よい感覚で広がる範囲に。目の前のガラスの意思に添う。20数個の型で200種類以上もの作品を作る。
ガラス作家安土草多さんの照明
「いつも販売店や料理店の方の言葉を思い浮かべて模索しています。自分ではどの形も好きなんです」。安土さんの作品は、ものに真摯に向き合う人たちと語らいの中で答えが見出され、生まれていく。4年前に料理店の大将に頼まれたハイボールグラスは、やっと姿が見えてきた。今、考えていることがある。「素早く大量に作り、作業を簡略化していった果てに、美しいものができる気がして。実験中です」。手間を省き生まれてくる統一感と、意図せずに現れる各個体の姿形の面白さ。長く暮らしに根付き、愛される“普遍的なもの”は、それではないか。「一代でどこまでできるかなぁ。分からないから楽しみですね」。この先を想い、にこやかに笑った。

基本情報

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その他備考 【販売ショップ】
やわい屋
住所:高山市国府町宇津江1372-2  
TEL.0577-77-9574
営業時間:13:00~17:00
定休日:不定休 
ホームページ:https://yawaiya.amebaownd.com//

掲載した情報は2016年9月11日時点のものです。
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