珈琲茶館
左岸
さがん
日常を離れて、ゆったりと過ごす時間を
洒落た看板が掲げられた白壁の塀。その門を抜けて庭園の脇を進むと、築130年余の木造家屋を改装したカフェ『左岸』が現れる。
オーナーの桑原典子さんは27歳のとき、友人を介して知り合った鑛司さんから熱烈なアプローチを受けて、結婚。岐阜で6代続く老舗料亭「大はま屋」に嫁ぎ、店を手伝いながら、2人の子どもを愛情深く育てた。結婚13年目に料亭は閉店。翌年の平成元年に、帳場や女中部屋があった建物内を改装してカフェをオープンした。店の名前は、鑛司さんがフランス留学中に過ごしたセーヌ川の“左岸”にちなんで付けられている。
そのカフェは建物の落ち着いた佇まいや自家製ケーキが評判を呼び、多くの客に親しまれている場所となった。だが、典子さんには気がかりがあった。西側に立つ、宴会場として賓客を迎えていた家屋のことだ。使われぬまま四半世紀が過ぎ、雨漏りがするほど老朽化していた。決断のために残された時間はない。ついに昨年、店を休業し、工事を決行。1年間の改修を終え、見事に息を吹き返した建物でカフェを再開した。店内には自身が製作するアクセサリーや、ジュエリーブランドを立ち上げている息子の悠さんの作品が並ぶギャラリースペースも設けられている。
大きな窓から、手入れの行き届いた庭園の緑が望める。「いつ見ても、木陰の光の具合がきれいだって思うの。この建物も130年経っていても、こんな風に残っているってすごいこと。日本建築っていいわね」。ここにいると落ち着くの、と心の底から嬉しそうにほほ笑む典子さん。
カウンターに使われている松は年輪がその歴史を物語り、欄間には「月と雲」があしらわれている。そんな風にこの空間を構成する一つひとつが、実に美しく、重みを持つ。だからこそ、このカフェでは丁寧に入れられた珈琲を片手に、穏やかに流れる時間を過ごしたくなる。
基本情報
住所 | 岐阜市松屋町1 |
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TEL | 058-262-0351 |
営業時間 | 10:30〜18:00 |
定休日 | 日・月曜 |
駐車場 | 14台 |
掲載した情報は2016年9月14日時点のものです。