ゆば勇商店
ゆばゆうしょうてん
いままでもこれからも。誠実にゆばと向き合う。
かつて城下町として栄えた岐阜市本町。“岐阜町”としての風情を残すこの地に店を構えて150年余り。ゆば専門店の『ゆば勇商店』では訪れた客が今夜の一品にと、生ゆばや乾燥ゆばを次々と手にしていく。
「作業はほとんどが手作業。道具は変わりましたが、作り方は変えていません」。そう話すのは5代目の山田政雄さん。まだ陽が昇らない早朝4時の作業場。6代目の知幸さんとともに、一晩浸水させた大豆をすりつぶし、搾取した豆乳をゆば釜に流し込んでいく。湯気が立ち昇る中、知幸さんが膜の貼り具合をじっと見つめ、串でさっと引き上げる。天候や温度、湿度で状態がころころ変わるため、見極めには経験と勘だけが頼り。ゆばはまるで生き物のようだ。
ゆばの命ともいえる大豆は毎年全国各地から取り寄せ、その年1番出来が良い産地のものを選定する。現在は、甘み豊かな北海道産「とよまさり」と、ゆばの張りが良くなる岐阜県産「フクユタカ」の2種をブレンド。それらを清流・長良川の伏流水が、まろやかな舌触りとふくよかな風味を感じるゆばにまとめてくれる。
13年前からは知幸さんが跡を継ぎ、特注商品にも精を出す。厚みを調節したり、バーナーで焼き目を付けたりと、細かな注文にも応える。「手作りは手間がかかる。でも、だからこそ、できることがあると思うんです」。さまざまな挑戦をする後継者の姿を頼もしそうに見つめる政雄さんは、「僕はもう古い時代の人間。若い者のやり方があるから、安心して任せているよ」と朗らかにほほ笑む。
江戸後期から続くこの店もここまで決して順風満帆というわけではなかった。戦後、精進料理としてのゆばの需要は低下し、糸引納豆の製造を兼業してしのいだ時期もあった。やがてゆばが家庭の食卓にも浸透し、栄養食材として注目されるようになったことで、ゆば一本で商売が成り立つようになった。
創業以来、時代に翻弄されながらも代々受け継がれてきた製法を変えず、ただひたむきに良いものを作り続けてきた『ゆば勇商店』。そんな老舗のいまを担う知幸さんは「お客様への感謝の気持ちを忘れずに、これからも地道にやっていきたいね」と語る。変わらないのは製法だけではない。どうやら愚直なほどの誠実さも何一つ変わっていないようだ。
基本情報
住所 | 岐阜市本町4-36 |
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TEL | 058-262-1574 |
営業時間 | 9:00〜17:30 |
定休日 | 日曜、祝日 |
駐車場 | 4台 |
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掲載した情報は2023年4月14日時点のものです。