養老鉄道

ヨウロウテツドウ

時計を覗き込み、足早に歩くビジネスマン。駆け足でホームに向かう高校生。気持ちの良い挨拶を交わし、切符を確認するトレインアテンダント。大垣駅構内は人で溢れ返っている。毎朝7時半のお馴染みの光景だ。
「養老鉄道」の誕生は大正2年。まずは池田町の「池野」から「大垣」を経由し「養老」までを運行。その後、大正8年に北は「揖斐」、南は「桑名」までの全線が開通した。「大垣」で桑名方面と揖斐方面の線路が合流してそれぞれ南と北へ走るスイッチバック形式のため、「大垣」-「揖斐」間は揖斐線、「大垣」-「桑名」間は養老線の名称で親しまれている。
「当初から村と村を繋ぐように、地域に密着して走っていたんでしょうね」と総務企画課の宮﨑淳さん。住宅街に添うように敷かれた鉄路。その車窓から見える風景に橋やトンネルは少なく、代わりに広がるのは集落や豊かな田園の風景だ。朝の混雑時は運行ダイヤが1時間2、3本に増発されたり、3両編成の列車が運転されたりと地域密着編成。“人々の足”として愛される所以である。
しかし、時代の推移の中で利用者数は減少の一途をたどっている。そこで、存続を願う沿線住民の支援団体が “乗って守ろう”と、様々な企画を立てて積極的に利用。また、養老鉄道でも平成10年には車内に自転車を持ち込める「サイクルトレイン」の運行を始めた。住民のみならず観光客にも好評で、今では養老鉄道の顔に。さらに、主要駅にはレンタサイクルを設置。おすすめルートが載ったマップを片手に沿線の観光地を巡ることができる。
養老鉄道で旅をするなら、長い歴史を感じさせる木造駅舎は見逃せない。中でも全線開通時に改築された「養老駅」は必見。大正ロマンの面影を残し、美しい屋根瓦が印象的だ。「素敵な建物でしょう?瓦には養老のYが刻まれてるの」。駅に降り立ち、目の前にある「きび羊羹本家」を覗くと、3代目の藤塚美智子さんが教えてくれた。駅舎の完成当時は周辺一帯が開かれ、旅館や商店が立ち並び、それは賑わっていたという。「人力車で養老の滝へ向かう人や宿泊客で溢れ、駅に人が吸い込まれるようだったそうよ」。この古い駅舎は、卸売専門の株式会社第一物産や特産品の瓢箪が並ぶひょうたん会館をはじめ、あらゆる店が軒並み開業した昭和の時代も、その隆盛を見守ってきた。そんな昔話を聞きながら、往時に想いを馳せて散策するのも、また楽しい。帰途の車内には、居眠りをする学生やほろ酔い顔の会社員の姿があった。
マルーン電車の車窓からは、目を見張るような絶景を見ることはできないかもしれない。けれども、そこには朝も、昼も、夜も、住民の日常が垣間見える。養老鉄道は、人々の暮らしに寄り添いながら走り続けて今年で101年目を迎える。

基本情報

TEL 0584-78-3400
URL https://www.yororailway.co.jp/
その他備考 路線:桑名(桑名市)ー揖斐(揖斐郡)
全長:57.5キロメートル
運賃: 桑名ー揖斐 950円(税込)
「フリーきっぷ」 大人1,500円(税込)
掲載した情報は2014年09月25日時点のものです。
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