樽見鉄道

タルミテツドウ

住民が渇求し、幾星霜を経て全線が開通した樽見鉄道。 地域の足となり、また、自らが観光資源となり、 その鉄路を絶やさぬために、レールバスは走り続ける。
大垣市から本巣市根尾までを南北に走る樽見鉄道は、周辺村落の鉄道への“渇望”から生まれた。大正7年、旧本巣郡の有志らが鉄道敷設の陳情運動を開始。昭和31年に国鉄樽見線「大垣」-「谷汲口」間が開業し、2年後、「美濃神海」まで開通。しかし、国鉄再建法により廃線が決まる。昭和59年、第三セクターとして「樽見鉄道」が開業し、平成元年の春、「樽見」まで全線が開通した。
樽見駅には、大正時代に全私財を投じて旧根尾村の開発に尽力し、鉄道誘致にも貢献した宮脇留之助氏の顕彰像が立つ。「強い意志を持ち、滅私奉公で根尾村の発展を願った人だったのでしょう」と曾孫の宮脇治道さん。曾祖父らの陳情から71年もの歳月を経て迎えた悲願の日。樽見駅の開通式には、留之助氏の遺影を手にした父・明道さんとともに参列したという。
樽見鉄道の列車は現在、すべてレールバスと呼ばれる気動車だ。JR大垣駅の6番線から出発し、「木知原」を過ぎた辺りで車窓の眺めは一変する。檜や杉が茂る林を抜け、深い緑を湛えた根尾川を渡る。「鍋原、オーライ、発車!」と運転士の声。突然、そこに言葉を失う眺望が現れた。第七根尾川橋梁。鉄橋の中を真っ直ぐ伸びる線路。その先で口を開けたトンネルの奥にも、小さな橋とトンネルが続く。険しい渓谷の中で、自然を凌駕するかの如き迫力。それは人々の積年の渇望が勝ち得た光景だった。
ベテラン運転士の今村安孝さんは、“駅員は一人何役もこなす”という社風通り、天分を発揮して営業にも奔走。現在は取締役運輸部長として多忙を極める。今夏、3年程前に持ち込まれた企画がついに実現した。劇団シアターキューブリックが主催する「樽見鉄道スリーナイン」。観客を乗せた列車を舞台に、役者が途中の駅で乗降しながらオリジナルストーリーを演じる“演劇列車”だ。「本巣駅以北の運行は90分に1本。少ない反面、柔軟にダイヤが組める。移りゆく車窓も良いスパイスになる。欠点を長所に変え、この鉄道自体を観光資源にすることで、地域の足も守る」。4日間の公演チケットは完売。企画は大好評を博した。「全8公演の乗客は240名ですが、数字以上の効果があったと思います。僕自身、列車の新しい可能性を感じました」と入社2年目、運輸部企画営業課の藤田敏明さん。いつか再び演劇列車を走らせたい、と控えめに微笑んだ。
赤字路線からのスタート。沿線5市町の援助を受け、徹底した経費や人件費の削減、企画営業による収益増で黒字に転換した樽見鉄道。社員35名が一人何役をもこなし、その鉄路を守っている。「この鉄道は存在自体が地域の文化やからね」。今村さんが言った。「バスに代替することもできた。それでも鉄道を作ったんです。先代らに敬意を表して、僕らが樽見鉄道を守っていかないかん」。

基本情報

TEL 0581-34-8039
URL http://tarumi-railway.com/
その他備考 路線:大垣(大垣市)ー樽見(本巣市)
全長:34.5キロメートル
運賃:大垣ー樽見 大人930円(税込)
「うすずみ温泉入浴券&1日フリー乗車券」大人2,200円(税込)
掲載した情報は2014年09月25日時点のものです。
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