暮らすファーム Sunpo
サンポ
自然に寄り添い、土を耕し、豊かな暮らしを
レタスやズッキーニ、コールラビが勢いよく葉を広げる。4年前、家族で加茂郡白川町の黒川地区へと移り住み、『暮らすファーム Sunpo』として有機農業を始めた児嶋健さんの畑。5歳の朔くんが、まだ細い春人参を畝からすっと抜いて土を払い、嬉しそうにかじりつく。「いつものおやつなんです」。2歳の旭くんを抱いた陽子さんが愉快そうに教えてくれた。
岐阜市に生まれ、愛知県の大手自動車メーカーで技術職に就いていた健さん。しかし、さまざまな格差や矛盾、問題を抱える世の中に疑問を感じ、自分たちで何か一つの問題解決を提示する仕事や生き方ができないかと模索していた頃に、縁がつながった。名古屋市のオアシス21で開かれている朝市で紹介された、黒川地区に住む西尾勝治さんとの出会いだ。
農薬や化学肥料、遺伝子組み換え技術を使わずに、自然の力をできるだけ生かして野菜や穀類などを作る有機栽培農家で結成する「NPO法人ゆうきハートネット」の理事を務める西尾さん。「もともと白川町には有機栽培に取り組む農家が多く、お互い支え合って、空き家や田畑を紹介する仕組みが昔からあったんです」。その仕組みが、近年、思わぬ効果を生み出していた。児嶋さん夫婦のように暮らし方を見つめ直す若い人たちが、何人も白川町に移り住み、空き家や田畑を借りて就農。高齢化と後継者不足で手が回らず、荒れていく休耕地を忍びなく思う農家と、それを耕しながら生き方を探したい若い世代。互いのニーズが一致し、世話役の西尾さんの親切さも助けとなって地区は着実に若返っていた。
黒川地区の現状やともに子育てができる世代が集落にいることを知った2人の決断は早かった。勢いに任せ、すぐに移住。健さんは1シーズン、先輩の農園で有機栽培を実践で学び、翌年に独立。休耕地を借りて、農園を開いた。現在は約4カ所で計1町2反ほどの田畑を耕す。栽培しているのは、じゃがいも、玉ねぎ、人参、オクラにナス、ピーマンなどの30品目ほどの野菜に、米や原木しいたけも。「自分たちが食べたいものは全部育ててます」。
ハウス栽培のトマトはまだ青々と硬い。「どの野菜もみんな、味が濃くてぎゅっと詰まってるって感じで、本当に美味しいの」。早く食べたいね、と旭くんの頭を撫でながら、待ちきれないように陽子さんが呟いた。やがて田植えが始まり、草刈りも本番を迎える。種蒔き、苗作り、豆の選別、収穫と出荷、加工品作り…。農家の仕事は1月に1週間ほど休む以外は、ほぼ無休。忙しく、体力勝負だ。天候にも大きく左右され、予期せぬ失敗もある。「やりたくてやってるから、苦労ではないですね。“楽しく農業をやる”がモットー。日々、できることを全力でやって、後はなるように。天任せです」。ここで見つけた暮らしは、本当に満ち足りて豊かだと、微笑む2人。夏には、自慢の野菜が並ぶ食卓に、5人目の家族が加わる。
基本情報
住所 | 加茂郡白川町黒川2508-2 |
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TEL | 0574-80-0016 |
URL | http://farm-sunpo.com/ |
SNS |
掲載した情報は2016年06月25日時点のものです。