丸福寿し
まるふくずし
60年以上愛される寿司屋
暖簾をくぐり、扉を開けると「はい、いらっしゃい!」と女将が温かく迎え入れてくれる。カウンター席で旬魚の握りを頷きながら味わう男性、大きな海鮮丼を前にうれしそうな家族連れ。店主の清水宏隆さんは常連客と談笑しながら寿司を握る。『丸福寿し』は今日も笑顔に溢れている。
海のない岐阜に住んでいる人にも新鮮な魚のおいしさを届けたいと、富山県出身の初代・清水孝さんが店を始めたのは65年前。幾度も移転を重ねた末にたどり着いた現在の地で、鮮度抜群の寿司や本場の越前かにが手頃に食べられる珍しい店として多くの客に愛されてきた。平成20年に先代が亡くなってからは、息子の宏隆さんがこの店を受け継ぎ、守っている。
朝3時半、大将は敦賀港や越前港へと車を走らせる。港では一尾一尾異なる魚の艶や色、曲線美に目を光らせ、わずかな差を瞬時に見抜いていく。10歳の頃から先代に同行して港に通い続けてきたが、直接目利きを教わったことはなく、その技を見て盗んだという。なかでもカニは難しい。古くから越前地方では“カニ見十年、カニ炊き一生”という言葉が伝わるほど、カニの目利きは至難の業だ。しかし、大将は本場の漁港で長年鍛えた自らの目を信じ、納得の一杯を店に持ち帰る。
「買い付けた魚に刃を入れたり、カニを茹でたりして上等なものだと確認できたとき、お客さんに旨いものを食べてもらえると思って安心するんだよ」と話す表情は無邪気な喜色に溢れている。
「買い付けた魚に刃を入れたり、カニを茹でたりして上等なものだと確認できたとき、お客さんに旨いものを食べてもらえると思って安心するんだよ」と話す表情は無邪気な喜色に溢れている。
「特製にぎり寿し」は、まろやかな旨みの本マグロなど、その日いちおしのネタに食指が動かされる。空気を入れるように優しく握られた寿司は、ひとたび口に入れるとシャリとネタがほろりとほどける。そして、最上のネタをさらに引き立てるのが地元農家のハツシモを使ったシャリの存在。酢を程よく吸った米はネタとバランスよく馴染む。シンプルだからこそ、ごまかしがきかない。彼の職人としての技量が表れた寿司を一貫ずつじっくりと食すのはまさに至福の時間だ。
店の看板でもある先代が始めた越前かに。それに対抗するかのように孝宏さんはフグ料理を始めた。「日本海の越前かにと太平洋のフグ。猿蟹合戦ならぬ、ふぐかに合戦だよ(笑)。父はライバルみたいな存在なので」。現状に満足せず、挑戦を続けるその姿に2代目としてのプライドが見え隠れする。そんな覚悟を知ってか知らずか、ここへ来た客は彼が握った寿司を幸せそうに頬張る。
「“幸せ”という感情は、おいしいものを食べたときにこそ感じられると思うんだ。だからこそ、その一瞬をこの店で感じてもらえたらうれしいね」。
ハレの日も、ケの日も。いつでもこの場所は幸せな空気に満ち満ちている。
「“幸せ”という感情は、おいしいものを食べたときにこそ感じられると思うんだ。だからこそ、その一瞬をこの店で感じてもらえたらうれしいね」。
ハレの日も、ケの日も。いつでもこの場所は幸せな空気に満ち満ちている。
基本情報
住所 | 岐阜市日置江5-72 |
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TEL | 058-279-0184 |
営業時間 | 11:30~14:00、16:00~22:00(LO21:00) |
定休日 | 木曜 |
駐車場 | 22台 |
URL | http://www.maruhuku.com/index.html |
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掲載した情報は2022年11月25日時点のものです。