四川料理
餃子飯店
ぎょうざはんてん
親しみやすく気取らない、まちの中華を
御鮨街道と中山道が交差する昭和の趣が残る住宅街。昼時になるとサラリーマンや家族連れ、近所の年配客で賑わう店がある。創業から50余年、地域の胃袋を満たしてきた『餃子飯店』だ。
厨房で中華鍋をリズミカルに振るのは、二代目の赤尾嘉明さん。ロマンスグレーの店主のルーツは、日本における“四川料理の父”陳健民ゆかりの店での修業時代。そこで学んだのは、多彩な香辛料を使って深みのある味わいを生み出す四川料理の神髄。また、エビチリに現地では使わないケチャップを取り入れるなど、本場の流儀を押し付けず、日本人の味覚に合わせてアレンジする柔軟さだった。その後、生家に戻った赤尾さんは、先代から受け継いだレシピに四川料理のエッセンスを取り入れた『餃子飯店』の味を作り上げていった。
メニューは炒飯や麻婆豆腐といった定番から、「中華風カツ丼」なる変わり種までおよそ90種類。品数の豊富さは、さまざまなシチュエーションで訪れる客を喜ばせたいという気概の表れだ。
看板メニューはもちろん「餃子」。赤尾さんが餡をつくり、奥様が一つずつ手作業で包み、焼く。多い時は1日に600個。30年近く夫婦二人三脚で作り続けてきた。絶妙な加減で焼きあがった、もっちりとした薄皮の中には餡がぎっしり。噛むと、肉汁がじゅわり。そこに、白菜とキャベツの甘みが重なる。外見も中身もシンプルながら、癖になる味わいだ。花椒と一味唐辛子の辛みが利いた自家製の四川風製ラー油もまた食欲を刺激する。
「うちの餃子は驚くようなレシピではないかもしれません。でも、僕が餡をこしらえ、家内が包んで焼かないと良い塩梅にはならないから不思議ですね」。
「うちの餃子は驚くようなレシピではないかもしれません。でも、僕が餡をこしらえ、家内が包んで焼かないと良い塩梅にはならないから不思議ですね」。
多くの常連客に愛される「天津飯」も味わい深い逸品だ。ふんわり柔らかな玉子の上に、醤油風味の餡がたっぷりとかかる。ベースとなる中華スープは、鳥ガラから出るあくを2時間かけて丁寧に取り除く。この労を惜しまない姿勢が味全体を底上げするのだ。そして最後に熟練の塩加減で味を見事にまとめる。「カウンター越しに見えるお客さんの喜ぶ顔が何よりうれしい」と話す赤尾さんの一手間と長年培った技術が、なじみのあるメニューをここでしか食べられない一皿に昇華させる。
出前が盛んで、市内にも数多くの中華料理店が溢れた時代から約40年。昔ながらの町中華がすっかり少なくなって久しい昨今。この店が荒波の中で残り続けているのは、今日も赤尾さんが真摯な気持ちで客の期待に応え、明日に臨む活力を人々に届けているからに違いない。
基本情報
住所 | 岐阜市加納南広江町60 |
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TEL | 058-271-3825 |
営業時間 | 11:30~13:45、17:00~21:00 |
定休日 | 月曜(祝日の場合は営業、翌日休み)、月に1回火曜休み |
駐車場 | 4台 |
掲載した情報は2022年5月24日時点のものです