florist GREEN VEIL

コンセプトは「パリテイスト」。店を開く前、地図やコンパスを頼りに1人でフランスの花屋を巡った日比さん。「当時、日本ではグリーンやニュアンスカラーの植物を扱う店は少なくて、華やかな原色の花ばかりが並んでいることが多かったんです。でも現地の花屋は全然違って」。淡い色合いの花々や、実ものや葉ものをふんだんに使ったアレンジメント、アンティークの什器や古道具で彩られた個性がにじむディスプレイ。まるで日常とは違う場所に足を踏み入れたような、統一された世界観。それはまさに記憶に残る花屋だった。運良く、現地の花屋で働くこととなり、約1カ月間、必死に知識や技術を吸収しながら、その空気感を心に深く刻んだ。そして帰国後の平成12年に店を構えた。

花の仕入れは週に3回。午前3時に起床し、名古屋の市場へ。花々の色合いや、産地や等級で異なる持ちを見極めて慎重に選び抜く。「可愛い」と感じる心のときめきを頼りに、珍しい種類も積極的に取り入れる。

アレンジメントは、同じ種類の花や葉であっても、咲き方や枝ぶりが異なるため、組み合わせ方次第で出来上がるものは一つひとつ違う。「だから、贈る人や場面、飾る場所を、なるべく詳しく聞くの」。対話を手掛かりに、日比さんがイメージを膨らませ、形づくっていく。そして、パリのあの花屋のように。この店で、誰かの記憶に残る花を届ける。