ギャラリー独楽
こま
日々を豊かにするものの魅力を丁寧に伝えたい
かつて、長良川で捕れた鮎を鮨にし、江戸幕府に献上するルートとして使われていた御鮨街道。昔ながらの日本家屋が並び、昭和以前の風情を残す通りに『ギャラリー独楽』はある。コンクリート打ち放しのモダンな空間には、食器を中心とした作家作品がセンス良く配され、客を迎える。オープンは27年前。店主の中野達雄さん、舞子さんが老後も夫婦が一緒に楽しんでいけることをしたいと考え、自宅の敷地内にギャラリーを建てた。
「結局主人は還暦以降も違う仕事をずっと続けていて、店に立つのはほとんど私。そういう意味では当初思い描いたようにはなってないかもしれませんね」と微笑む舞子さん。彼女は確かな審美眼と柔らかな物腰に定評があり、客からも作家からも愛されるギャラリストだ。
もともとギャラリーに勤めたことは無かったが、好きが高じて全国のギャラリーを長年回り、作家や作品についての知識は十二分に蓄積されていた。開店当初は無名のギャラリーで個展を開く作家は多くなかったが、何度も彼らの元に足を運び、熱意を伝えた。良い作家や良い作品の素晴らしさを深く知り、それを客に伝え、喜んでほしい。舞子さんの強い思いに溢れた行動が作家の心を動かし、少しずつ「ギャラリー独楽で個展をやらせてほしい」と依頼が来るようになった。
作品を選ぶ基準は、“シンプル、仕事が丁寧、使いやすい”。そのため、華美な装飾や一目で造形の特色が分かりやすい器が並ぶことはほとんど無い。どちらかというと、一見 “ふつう”の器と変わりがないように映るもの。しかし、使い続けるとじっくりと良さが分かり、自然と愛着が湧いてくるものを揃える。例えば、ちょうど良い形状で料理が盛り付けやすい皿は食卓での登場回数が多くなる。持った時の重さや手触りが心地良く、口当たりの良い漆の碗は人に勧めたくなる。
舞子さんは作品に目を凝らし、作家の言葉に耳を傾け、真意をかみ砕き、客にさりげなく自分が気付いた魅力を伝える。「とにかくたくさんのものを見て、違いを知る。そして自分で使います。使うことで分かる良さ。それを人に伝えたくて、ギャラリーをやっているのかもしれません」。
家族や友人をもてなす際に使いたくなる器や、晩酌の時間をより上質にしてくれる酒器。食卓を凛と、端正に見せる折敷や自然と手になじむ箸。良いものを日常に取り入れると、生活が豊かになる。当たり前なようでおざなりになりがちな大切なことを『ギャラリー独楽』は静かに伝え続ける。
基本情報
住所 | 岐阜市中竹屋町17-1 |
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TEL | 058-266-1050 |
営業時間 | 12:00~17:00 ※個展開催期間中は11:00~18:00 |
定休日 | 水、木曜 |
駐車場 | 3台 |
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掲載した情報は2021年11月22日時点のものです。